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「瓜を破る」を語ろう 著者・板倉梓さんトークショーレポ その4(終)

2023/12/29

  • 企画

2023年10月22日(日)ブックファースト新宿店にて「瓜を破る」8巻発売を記念した、著者・板倉梓さんのトークショーが開催されました。
事前に参加者から寄せられた質問に板倉さんが答えるトークショーの内容をほぼ網羅したアーカイブ記事のラストとなる、その4を公開します!

トークショーレポその1はこちら
トークショーレポその2はこちら
トークショーレポその3はこちら

Q.26:キャラの中で花絵ちゃんが一番好きです。香水を作るとしたらどんな香りにしますか?

板倉:読者プレゼント企画としてキャラクター香水を作ったときに、

(編集部注:プレゼント企画は終了しております)
まい子の香水には甘い香りをそれほど入れなかったので、塚田は甘い香りを入れたいですね。
オリジナル香水を作れるお店で試したローズやバニラ、シャボンの香りがすごくかわいくて、似合いそうだなと思います。

塚田は最近出番がないので、また登場させたいですね。
塚田も少し嫌われがちなとこがあるのでこの質問、嬉しかったです。

Q.27:作品を描くにあたり影響を受けた漫画や小説、映画などはありますか?

板倉:特にこれ、という特定の作品はないですね。
漫画は…自分が描くようになってからは、なかなか他人の漫画を読むのがしんどいというのもあり、あまりたくさんは読まなくなってしまいました。
これは同業者の友達もあるあるだねって言ってます。

映画は好きなのでよく観ています。
その中でも特に、等身大の人々の人生に起きる悲喜劇を描いた作品が好きで、瓜にはそういうのが活きているかなと思います。
ノア・バームバック監督や、ポール・トーマス・アンダーソン監督、イ・チャンドン監督などはまさにそういった作品を撮るので、好きで何本も見ていますね。

そうそう、イ・チャンドン監督の『バーニング』という作品に登場する男の子を、人と関わるのを避けている初期の鍵谷の少し参考にしました。
漫画を描くときの会話のテンポや間など、映像的な考え方は、私は漫画よりも映画からの影響が大きいと思います。
とはいえ私の漫画はすごく漫画っぽい絵なので、そこに無理なく取り入れるように工夫しています。

Q.28:鍵谷くんが初めてまい子さんの家に行ったときに飲んでいたのは、「ほ◯よい」の「ハ◯クルサワー」かなと思って飲みましたが鍵谷くんにピッタリの可愛いお味でした。まい子は何を飲んでいたのか教えてください。

板倉:伏せ字が多い(笑)。
この質問をいただいて読み返してみたんですが、まい子が何を飲んでいたのか私にもよく分からなかったですね。
でも鍵谷は甘いのを選んだので、まい子はそこまで甘くないのを選んでそうだなと思いました。
チューハイのレモン系のすっきり味みたいな感じだと思います。

Q.29:鍵谷さんがよく買うアイスは何ですか? シャーベット系? バニラアイス系?

板倉:これもかわいい質問ですね。
これに関しては家族会議をしました、「鍵谷なんのアイス食べてそうかな?」って(笑)。
娘は小学生で、瓜はエッチな漫画なのでもちろん読ませてはいないんですけど鍵谷のキャラクター性は知ってくれているので…アイスが大好きな夫と娘は「スーパーカップじゃない?」と。
鍵谷はシャーベット系は選ばなそう。
アイスもあまりしょっちゅうは買わないと思いますが、というわけでスーパーカップのバニラです。
木のスプーンついてくるやつ。

Q.30:作品のイメージソングがあれば教えてください。

板倉:一曲あるので、聴いてもらってもいいですか?
(会場に流れる音楽)。
これ、東京スカパラダイスオーケストラの「君と僕」という曲です。
瓜は日常にある、人から見たら本当に些細な嬉しいこと、悲しいことなどを描いている作品なので、素朴でちょっと切ないメロディーがぴったりだなと思います。

みなさんファンレターでキャラのイメソンをいろいろ送ってきてくれて、「そういうのをイメージしてくれてるんだ」って思うんですが、私は日本語の歌詞がある曲は作業中、気が散ってしまうので、あまり聞きません。
なので私の中の瓜のイメージはこの曲だな、と思って作業中も時々流しています。

Q.31:お仕事シーンがリアルで現実感があって好きです。やはり取材しているのでしょうか?

板倉:仕事シーンも特に取材はしていないんです。
会社員をしているママ友の話だとか、かつて私がグラフィックデザイナーをしていた時にはメーカーの広報部やマーケティング部の人なんかとも関わる機会が多かったので、それらを思い出しつつ想像しながら描いてます。
それと私の会社員時代、仕事自体はかなりブラックでしんどかったのですが、周りはけっこう気のいい人たちで、会社内の人間関係みたいなものはそれなりに楽しかったんです。

だから漫画でも、会社内でことさら変な人間関係のトラブルを起こすとかそういうのは違うなと。
それぞれがそれなりに真面目に仕事に取り組んでいる、っていうリアルさを心がけてますね。
それと勤めていた会社は作中のフォースデザイン(5巻30話に登場)みたいな会社なんですが、コピー機をものすごく使うので、本当にしょっちゅうつなぎを着たコピーメンテナンスの方が来ていたんです。
鍵谷の仕事なんかはそれを思い出して描いています。

Q.32:コミックスのタイトルロゴのカラーは、表紙を飾るキャラのイメージカラーかなと思っているのですが、実際、キャラにイメージカラーはあるのですか?

板倉:瓜のコミックスの装丁を担当してくれているのは、みなさんがきっと見たことある漫画の装丁をたくさん手がけている名和田耕平さんというデザイナーさんです。
1・2巻は2カ月連続刊行だったので、このまい子と味園さんのイラストは同時に描いたんですが、髪色を変えたほうが分かりやすいかなと思って、まい子は赤、味園さんは紫にふった結果、名和田さんがその色に合わせた文字色のタイトルにしてきてくれました。

驚いたのが6巻の鍵谷ですね。
鍵谷の髪は少し青みがかっているので、名和田さん、青系にしてくるかな?と予想したらこのグレーでした。
確かに鍵谷は作中でよくグレーのTシャツを着ているので、名和田さんは内容をよく読んで鍵谷を解釈してくれたんだなと思いました。
なので、コミックのタイトルカラーは名和田さんが多分並んだときのバランスなんかも見ながら決めてくれています。
私の中のキャラのイメージカラーは特になく、なんとなく髪色の方向性はバラバラにしようと思って描いているだけですね。

ちなみに、登場人物が身体をシーツで隠している、というこのフォーマットは名和田さんの発案です。
内容を読んでデザインを考えてくださる方なので、最初の打ち合わせでそれを言われて、その場でもっとキャラをアップめにラフを描いたら「いや引きで、真ん中に立っているデザインにしましょう」と提案してくれて。
そのデザインが8巻まで踏襲されています。
タイトルのレイアウトも、左上から横に読むと「破瓜」になるように組んでくれていますね。
タイトルの文学的な感じと同じく、品があってお気に入りの装丁です。

こうして並べると鍵谷が一番露出度高いですね(笑)。

このポーズ以外に胸を隠したポーズのラフもあったんですが、なんだかしっとり過ぎちゃってて…今のこのポーズになりました。
並べてみると、各キャラの身長差が分かるようになっているので、ぜひチェックしてみてください。

Q.33:最終回の構想はすでにありますか?

板倉:それが、ないんですよね…。
まだまだ描きたいことが渋滞しておりまして。
このタイトルから、まい子が性体験を済ませたら物語も終わると思っていた方が結構いたんですが、そこで終わらせることは最初から考えていませんでした。
みなさんも生きていてわかると思うんですが、コンプレックスって、解消されてもすぐに次のコンプレックスがやってくるんですよね。

なので、帰結の見えない物語にはなっています。
でももちろんいつかは終わらせなきゃいけないので、描きながら考えていこうと思います。
たくさんの方に読んでいただけているおかげで、当面、最終回を考えずにいられるのは連載漫画にとって本当に幸せなことです。

でも、無駄に引き延ばしたりするようなことは絶対にしませんので、そこは安心してください。
読み応えのある話を最後まで描いていきますので、ぜひ見届けてほしいと思います。
あとは健康に気をつけて、コンスタントに刊行できるようにしないとなと思っています。
今、9巻に向けて作業をしているので、カバーが誰になるかも含めて楽しみにしていてください。

以上、多岐にわたる「瓜を破る」の舞台裏をお届けしました。
作中のロケーションやキャラクターの参考ファッションブランド、作品のイメージソングなども公開されましたので、あわせてお楽しみいただけると幸いです。
今後の「瓜を破る」の展開にどうぞご期待ください!

テキスト/中島夕子

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